労働災害に遭われてしまった方の多くから、「受け取っている労災保険金が適正かどうかわからない。」「受け取っている労災保険金以外に請求できる損害があるのかわからない。」「会社側が提示する賠償額が適正かどうかわからない。」といったご相談を受けることがあります。

労災保険金を受給した後でも、会社に責任がある場合には、会社に対して民事損害賠償請求をすることが可能です。

労災からの支給は支給基準にしたがって定型的に判断されますが、加害責任者(会社・第三者)に対して請求できる賠償金の金額は、それぞれの事案によって大きく異なるため、これらの補償が実際に妥当であるかどうかは、専門家に聞いてみなければわからない面が強いです。

そこで、上記3つのようなお悩みがある場合は、まずは弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

ここでは会社(事業主)に対して民事損害賠償請求を行う場合の、賠償金の内容、計算方法の一部について、ご説明します。

主な賠償金の項目は以下のようになっています。

主な賠償金に関する項目

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財産的損害積極損害①治療関連費治療費、通院交通費、付添看護費、将来の治療費など
消極損害②休業損害労災事故で減少した収入の補償
③逸失利益労災事故が発生していなければ被災労働者が得られたであろう将来の収入等の利益
精神的損害慰謝料④入通院・治療・怪我に対する慰謝料災害によって被害者が受けた精神的苦痛に対して支払われる慰謝料で、入院・通院期間や怪我の程度などによる基準があります。
⑤後遺障害に対する慰謝料後遺障害による精神的苦痛に対する慰謝料で、後遺障害の等級や年齢などの事情によって算出されます。

財産的損害

治療関連費

被災した場合の治療費や入院費を会社(事業主)に請求することも可能です。しかし、労災保険により療養(補償)給付を受給できる場合には、手続きの簡便さ、迅速性等から労災に給付申請を行うことが多いです。

もっとも、労災には一定の支給基準があります。例えば、交通費の支給に際し片道2km以上の距離等一定の条件がありますが、条件を満たさない場合であっても必要性相当性が認められれば加害責任者に請求が可能である場合があります。

また、入院中個室を使った場合の差額ベッド代等も同様です。

直接会社(事業主)に治療関連費を請求する場合に決まった書式等はありません。

支払った内容・金額が分かる資料(領収書)はほとんどのケースで必要になるでしょう。

また、そのような治療関連費の必要性相当性があると認められるよう資料を揃えるべきですが、入院中の個室の必要性、タクシーの必要性などについては、医師の診断書等の医学的資料は裁判の場でも有力な証拠となることが多いです。

入院・通院時の損害賠償

休業損害

労災における休業補償給付は、①第4日目から支給が開始する②給付基礎日額の6割に休業日数を掛け合わせた金額が支払われるといった特徴があります。

ですので、支給を受けられない部分(初日から第3日目までの待機期間分、給付基礎日額の4割に相当する部分)の賠償を受けるためには加害責任者に直接請求をする必要があります。

この場合、労基署に提出する休業補償給付支給請求書の写しをもって、事故がなければ得られたはずの収入、休業の日数・必要性を証明するという方法があります。

また、交通事故の場合休業損害証明書という自賠責保険会社の書式がありますが、別途これを作成するという方法もあります。

例えば、有給を消化した場合は労災では支給の対象となりませんが、加害責任者に同部分の賠償を求めることが可能です。この場合、休業損害証明書上で有給の詳細を証明してもらうことが考えられます。

逸失利益

逸失利益は、事故前の課税前収入に、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率、労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数を乗じて計算されます。

もっとも逸失利益は金額が多額になりがちな一方、個々の事例による修正や判断が多くなされる項目になりますので、一度専門家に具体的な計算方法を相談することをお勧めします。

加害責任者に請求するためには、後遺障害の等級や内容を明らかにしなければなりませんが、通常労基署からは支払いに関するハガキが来るのみでそこには認定に至った理由等は記載されていません。

例えば裁判等をする場合には、労働局から後遺障害の認定の理由等を記載した書類を個人情報の開示請求という手続きにのっとって取得することがあります。

精神的損害(慰謝料)

労災保険では、慰謝料は給付の対象になりません。そこで、慰謝料すなわち被災したことに伴う精神的苦痛は会社(事業主)に請求していくことになります。

慰謝料の種類

慰謝料には、大きく分けて入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3つがあります。

入通院慰謝料には被災したことや、その後通院を余儀なくされたことに伴う慰謝料、後遺障害慰謝料は後遺障害が残存したことに伴う将来の精神的苦痛の慰藉を含みます。死亡慰謝料は不幸にも労働災害により亡くなってしまったことにより認められるものです。

実務上、慰謝料の算定にあたっては、交通事故の裁判のケースで一般的に用いられている基準が、労働災害の民事損害賠償請求でも参照されています。そこで、あくまで目安となりますが以下それぞれの慰謝料項目と共にご紹介させていただきます。

入通院慰謝料

裁判所・弁護士基準の入通院慰謝料の基準には、2種類あります。

1つは、むちうちなどの傷害の場合で、他覚所見がないケースです(いわば軽症の場合)。

他覚所見というのは、医師などの第三者が客観的に把握できる症状(レントゲンやMRIなどの画像によって発見される異常など)のことを言います。

そのため、他覚所見がないケースというのは、「痛い」「しびれる」などの患者による自覚症状しかないケースということになります。

もう1つは、他覚所見もある一般的な傷害のケースです。

自覚症状しかないケースでは入通院慰謝料は比較的低くなり、それ以外の他覚所見が認められる一般的なケースの方が入通院慰謝料の金額が上がります。

他覚症状がなく、自覚症状しか認められないケース

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入院1ヶ月2ヶ月3ヶ月4ヶ月5ヶ月6ヶ月7ヶ月8ヶ月9ヶ月10ヶ月
通院356692116135152165176186195
1ヶ月195283106128145160171182190199
2ヶ月366997118138153166177186194201
3ヶ月5383109128146159172181190196202
4ヶ月6795119136152165176185192197203
5ヶ月79105127142158169180187193198204
6ヶ月89113133148162173182188194199205
7ヶ月97119139152166175183189195200206
8ヶ月103125143156168176184190196201207
9ヶ月109129147158169177185191197202208
10ヶ月113133149159170178186192198203209

(単位:万円)

他覚症状がある一般的な傷害のケース

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入院1ヶ月2ヶ月3ヶ月4ヶ月5ヶ月6ヶ月7ヶ月8ヶ月9ヶ月10ヶ月
通院53101145184217244266284297306
1ヶ月2877122162199228252274291303311
2ヶ月5298139177210236260281297308315
3ヶ月73115154188218244267287302312319
4ヶ月90130165196226251273292306316323
5ヶ月105141173204233257278296310320325
6ヶ月116149181211239262282300314322327
7ヶ月124157188217244266286304316324329
8ヶ月132164194222248270290306318326331
9ヶ月139170199226252274292308320328333
10ヶ月145175203230256276294310322330335

(単位:万円)

後遺障害慰謝料

裁判所・弁護士基準の後遺障害慰謝料の基準は、下記表が参考になります。

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第1級第2級第3級第4級第5級第6級第7級
2,800万円2,370万円1,990万円1,670万円1,400万円1,180万円1,000万円
第8級第9級第10級第11級第12級第13級第14級
830万円690万円550万円420万円290万円180万円110万円

ここで定められている等級は基本的に労災の等級と同等のものを指します。数字が少ないほど重症ということになります。

死亡慰謝料

一家の支柱の方の死亡事案の場合は2800万円、母親・配偶者の方の死亡事案の場合は2,500万円、その他の方の死亡事案の場合は2,000万円から2,500万円という基準がございます。

個別具体的な事情によって、増減されることになりますので、あくまでも上記金額は目安になります。


当事務所では、労災保険給付のサポートから、状況に応じて、事業主との損害賠償の交渉を、依頼者に代わって行います。事業主への交渉については、賠償金額が大幅に増額するケースも少なくありません。

労災発生から解決までの具体的な流れは以下をご参照ください。